院内誌まほろば92号

表紙

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「蕎麦の花」

 

 

 平成4年から国営総合農地開発事業で広がった15ヘクタールの広大な農地をソバ畑として活用しています。天理ダムに近く、龍王山、鳥見山、貝ヶ平山などに囲まれた高原になっていて、8月にまかれた種が、9月中旬ごろから花の見頃になります。一般的に蕎麦の花は白とピンクがありますが、この一帯で見られるのは白い花です。
 また、笠地区はカマドの神様として名高い日本三大荒神の一つ笠山荒神社でも知られています。近くには蕎麦を賞味できる「笠そば処」もありますので、お参りの際には立ち寄ってみてはいかがでしょうか。

撮影 リハビリテーション科 山本 成敏


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「血液内科の感染対策の話」

血液内科医師 星野 永

 今年の7月から当院には血液内科が専門の常勤医師が2人から3人に増員されました。今後奈良医大や地域の関連病院と連携し、今まで以上に血液疾患患者の診療を行っていく所存です。
 さて、今回は血液内科の治療で重要となる感染対策についてです。血液内科では免疫を担う血球の造血機能が低下する疾患や、大量の抗癌剤や免疫抑制薬により、低免疫となった患者さんの診療を行っています。
 低免疫の患者さんは感染症が生命の危機に直結します。その中で患者さんから良く質問されることが、感染対策についてです。患者さんの状態により許容できることに差がありますが、大事なことは患者自身や家族、医療者の正しい理解です。
 よく映画やドラマで見るような白血病治療の際に入る無菌室に閉じこもれば感染症にはならないか・・・答えはNoです。なぜなら人間の皮膚、粘膜、腸内などに正常な状態でも存在する常在菌が原因となり、感染症を発症することもしばしばあるからです。
 こういった感染を防ぐには、うがい手洗いや保清を正しく行うことが極めて重要です。また、医療者が患者に病原体を運んでしまう院内感染が原因となることもしばしばありますのでこれを防ぐことも非常に大事です。
 感染対策は患者さんに接する全ての医療者に関わる課題であり、改善の余地も多分にある領域です。意識を持って行動いただき、何か気づいた点や良いアイデアが浮かべばいつでもご連絡下さい。


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「サリドマイド」のお話

薬剤師 井口 仁美

 サリドマイドという言葉をご存知ですか?1957年に旧西ドイツで開発され、全世界で睡眠薬・胃腸薬など幅広く使用されるようになりました。日本では睡眠薬としてだけでなく、妊娠悪阻の薬としても販売され、多数の妊婦が使用していました。その後、旧西ドイツで1961年にレンツ博士がサリドマイドによる胎児奇形の可能性を警告し、同月にサリドマイド製品の回収が行われました。胎児奇形としては内臓奇形による流産・死産、アザラシ四肢症などが報告されています。日本は旧西ドイツより半年以上遅れて、販売中止と自主回収を始めたため、その間にも被害が拡大していきました。
 時は経ち2008年、有効な治療薬の乏しい希少疾病である多発性骨髄腫(血液がんのひとつ)に対しサリドマイドの有効性が確認され、再度日本で処方薬として承認されました。現在、サリドマイドを含むサリドマイド誘導体をIMiDsと総称し、サレド®・レブラミド®・ポマリスト®の3剤が国内で販売されています。承認の条件として、過去に起きたような薬害を繰り返さないために、IMiDs処方時にはTERMS®・RevMate®といったシステムによる厳重な管理体制が敷かれています。主には催奇形性の可能性を伝え、適切に避妊や薬の管理を行うこととされています。
 過去には有害とされたIMiDsですが、治療薬の少なかった多発性骨髄腫における治療成績の飛躍的な改善に貢献しています。過去には「悪」と思われていた薬でも適切に管理・使用することで、希少疾病を患う患者さんにとっての「希望」に変わることができたのです。


「抗がん剤治療の食事の工夫」

管理栄養士 辻本 牧子

 がん化学療法は、手術や放射線の局所療法と異なり、基本的に全身に作用が及ぶ全身療法です。抗がん剤は特に、細胞合成を障害する「細胞毒性」を持っています。その作用が正常な細胞にも及ぶために生じるのが副作用です。抗がん剤の細胞毒性は、分裂・増殖が盛んな新陳代謝の周期が短い細胞に現われやすいのが特徴です。口からのど、食道、胃、腸にかけての消化管の細胞はその代表です。そのため、口の粘膜細胞が損傷を受ければ口内炎が生じ、舌の味蕾細胞が損傷されると味覚障害が、胃腸の粘膜細胞が障害されると吐き気や嘔吐、下痢や便秘が起きてきます。
<味覚障害>
 味覚は、食べ物が唾液と溶け合って舌にある味蕾細胞に伝わることで感じるものです。抗がん剤は、唾液の分泌を低下させ、味蕾細胞にダメージを与え、味蕾の再生に必要な亜鉛の吸収を低下させます。治療中は、抗がん剤の種類によって味に敏感になったり、感じにくくなります。
対策:味を感じない場合は、塩味だけ酸味だけなどのシンプルな味付けにしましょう。食材も味付けもできるだけ単純な方が味を感じやすいようです。調味料を別添えにして、一口ごとに味を足しながら食べるのも有効です。
<におい過敏>
 においは、鼻の粘膜にある嗅覚受容器から神経を通じて脳の嗅覚中枢に送られて感じられます。この嗅覚のどこかが障害を受けると、においに過敏になったり、感じにくくなります。
対策:温かい料理は、においが湯気とともに立ち上がりやすく吐き気を誘発しやすいようです。冷たい麺類や酢飯、果物など冷たい料理や食品を利用しましょう。


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「がんのリハビリテーションについて」

リハビリテーション科
理学療法士 芹川 菜緒美

 

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 当科では医師・看護師・療法士のチームでまるまる2日間の厚生労働省公認の研修を受け、がんのリハビリテーションの算定(1単位20分、200点)を行っています。 特徴としては、がん疾患の患者さんに対し(いろいろと条件はありますが)入院中のみ何度でも、算定上限なしにリハビリテーションを行えることです。逆に同一疾患名で複数回の診療報酬の算定が可能であるため、急性期リハ介入で算定できる早期加算の算定はできません。
 がんの手術前後に介入する周術期リハ、血液内科疾患や術後の抗がん剤治療中のリハ、放射線治療中のリハ、骨転移に対する保存治療や術後のリハ、緩和期のリハなど病期や病状、症状も多岐に亘っています。
 患者さんやご家族の想いと希望、主治医の治療方針、生活環境、ご本人の活動能力、ご家族の介護力、病状や予後など様々な情報収集と意見交換を行いながら、目標に向け、リハビリテーションを施行しています。当科では基本的に担当制のため、複数回の入院でも同じ療法士が担当させていただき、病状や住宅環境、ご家族との関係性など把握した状態でリハビリテーションを施行できるように配慮しています。
 がん患者さんは常にご自身の病状と気持ちの揺れに対して闘っておられます。私たちはその気持ちに寄り添えるよう多職種と連携し、サポートできるように努めています。

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